「うたプリ」ショックで地獄を見た話

乙女に人気のコンテンツ「うたの☆プリンスさまっ♪」、通称うたプリ。
今は落ち目になりつつあるが、それでも名前を知らない人はいないのではないだろうか。

うたプリを提供するのは株式会社ブロッコリー。
そのブロッコリーが、2013年にうたプリのアプリをリリースすると発表した。

大人気乙女コンテンツの初のアプリ化。
これは来る…！
私は確信した。

それからはや1年。
これは、私がアプリ「うたプリアイランド」によって地獄を見た話である。

2014年4月

2013年12月に制作が発表された「うたプリアイランド」。
しかしこの時、私はまだ株を始めていなかった。
4月に株を始めた私は真っ先にブロッコリーに目をつける。

しかし、ブロッコリーには他の株と違う特徴がひとつあった。
売買の最低単位が1000株単位なのである。

当時の株価600円×1000株＝60万円。
そんな大勝負をする勇気も金も無かった。
しばらく株価を眺めるだけの日々が続く。

2014年5月

2014年春配信予定を6月下旬配信予定に延期したものの、わずか一週間でiOS版事前登録者数5万人を達成する。
「いける…！」
その勢いにますます確信を強めた私は、ブロッコリーの購入を決意する。
あとはいつ、いくらで買うかである。

2014年6月

配信が今か今かと待ち望まれる中、4月に600円だった株価はアプリリリースの期待で上がりまくり、わずか2カ月で1000円になった。
1000円×1000株＝100万円が購入に必要である。
60万で尻込みしているうちに、あれよあれよと100万円も必要になってしまった。

弱小派遣社員の私にそんな余力は無かった。
しかし、この勝負に勝つ自信はあった。

迷ったが、長年預けていた定期預金を解約して証券会社に突っ込んだ。
いま思えば必死すぎて泣ける話である。
満を持して、1000株購入。ここまで長かった。
しかしこの戦いがもっと長くなる事を、当時の私はまだ知らない。

1000株単位の為、10円動くと1万円、100円動けば10万円である。
100万の種銭を用意するのにも苦労する私に、毎日数万の上下は心臓に悪すぎた。
DOKI×2で壊れそうな毎日。
購入後、順調に株価は上がり、利益も増えて行った。

2014年6月26日

運命のiOS版配信スタート。
ここが一端の天井と見て、買い直すつもりで一旦利益確定。
950円で買った株を1150円で売って15万円の利益だった。

「もっと早く買っておけば良かった」

一番に思ったのは利益の嬉しさより悔しさだった。
4月から目はつけていたのだ。
あの時に買っていれば利益は55万。
ぐぎぎと歯ぎしりして、「次はうまくやるぞ」と強く思った。
この決意が、のちの悲劇を生む事になる。

ゲームは配信開始と同時に一瞬でアクセスが殺到。
最初のゲームダウンロードすらできない状態が続き、「課金島上陸できない」「入国審査厳しすぎる」など乙女の悲痛な叫びが夜通しこだました。

その一方、限られた人数しかゲームプレイできていない状態にも関わらず、配信して数時間でAppStoreのセールスランキング30位近くまで上昇。
「課金島」の実力（課金力）を証明する。

2014年6月27日

1日経っても相変わらずゲームダウンロードすらできない中、数時間単位の短期メンテナンスを何度も繰り返す。
今の私ならば、ここで危ないと思っていた所だろう。

しかし、この頃の私は完全にブロッコリー教の信者と化していた。
「まだまだいける！」
タイムマシンがあったら迷わずこの時にワープして自分のiphoneを破壊してやりたい。
いやむしろ自分自身を破壊してやりたい。

よりによってこのタイミングで買い、よりによって1350円、よりによって2000株。
何故このタイミングでこんな暴挙に出たのか理解不能だが、おそらく4月に買わずに6月により高値で買った悔しさがここで噴出したのだと思う。

今回はうまくやるぞ、自分の判断は間違ってなかったんだ。
「乗るしかない、このビックウエーブに…！」

ひとつだけ言える。
本当にバカである。

ゲームは6/30までのメンテナンス期間延長を発表し、いったん鎖国。
プレイ出来た人からは、ゲーム内の課金アイテムであるジュエルやポイントが無限に増やせる無限増殖バグの報告が相次ぐ。
逆に購入したアイテムが反映されない等のアイテム消滅バグも確認されTwitterは阿鼻叫喚状態。

いち早い再開を望む反面、乙女たちからは「もう時間かかかってもいいからちゃんと作りなおしてくれ」との声も増え始める。
あとから思えば、ここもわかりやすいフラグ、絶好の逃げ場であった。

2014年7月1日

審判の日。
株式会社ブロッコリーから「抜本的な修正をする」と正式に発表がある。
サービス再開は2014年10月予定と告知。
事実上の課金島沈没である。

この発表を見た時のショックは今でも忘れない。
一気に血の気が引いた。

スッ高値で掴んだ2000株。
100円下がれば20万円の損出である。
アプリの期待で600円から1400円まで上がった株。
100円程度の下げで済むはずがない。

心のダム崩壊。
胃液が逆流して吐きそうだった。

明日はどうなるのか…。
当然、夜は不安で眠れなかった。

2014年7月2日

株価は当然ストップ安、一気に300円下げて1080円で張り付いた。
（株価には値幅制限があり、1日に決められた金額以上は下がらない、ストップ安はその下限）

スマホで自分の取引画面を見る。
前日より300円下げで、何もしていないのにすでにマイナス60万円の数字が無慈悲に刻まれている。
しかし、売りたい人が多すぎる＆買いたい人がいないので、売りたくても売れないのだ。

何もできないでマイナスの数字を見る事しかできない。死にたい。

2014年7月3日

私は泣きながら朝の成り売りに並んだ。
今思えばこの判断も失敗だったのだが、とにかく早く売りたかった。
絵に描いたような「狼狽売り」と言う奴だ。

980円で2000株売り。
たった1日で72万円を失う。
死にたい。（1日ぶり2回目）

「株って怖いな」そう思っただろう。
しかし話はここで終わらない。
地獄には続きがあった。

2014年7月

7月の頭に、課金島沈没によりストップ安。
株価もアプリ期待で上がる前の600円まで戻ると思われた中。

信じられない事に、7月中旬から早くも株価は復活し始める。
一時970円まで下がった株価はわずか二週間後に1300円に。

たとえ延期になっても中止になった訳ではない。
待っていればいつかは配信されるのだ。

配信して数時間でセールスランキング30位近くをつけたインパクトも強かった。
「ぅゎっょぃ」
再配信まで待とうと持ってる株を売らなかた人、下がった所で新たに買った人が多かったのだ。

この時の私の悔しさを察して頂きたい。
「あの時、慌てて売らずに握っていれば…」
1350円の買い値には届かなくても、50円差のわずか10万円の損失で済んでいた。

75万の損失が、2週間経てば10万円になっていた。
このショックは大きかった。死にたい。（2週間ぶり3回目）

これが第二の地獄である。
株に罪は無いが、自分の浅はかさが本気で嫌になり、株辞めようかとも思い始めた事件であった。

2014年8月

株式会社ブロッコリーから「より精度の高いプログラミングと内容を目指す」とさらなる延期が発表される。
サービス再開は12月下旬予定と告知。

また、開発を株式会社M2Kから変更する事も発表される。
クライアントプログラムは「A列車で行こう」などで知られるアートディンク。
サーバプログラムは「恋する私の王子さま」のサーバ開発などで実績があるサイバーズが担当。

この頃の私はブロッコリーショックが抜けきれず、完全にやる気を失っていた。
「2014年の取引履歴」を見てもわかるように、8月9月10月はひどいマイナスである。

2014年12月

12月下旬予定のアプリ再配信の需要がピークになり、株価はなんと1800円まで上昇した。
損失が減っていたどころの話ではない。
ここまで耐えていれば、プラス45万円の利益。

もう悔しくて悔しくて震えまくりなのだが、全ては自分の実力不足である。
マーベラスに助けられた事もあり、この頃にはブロッコリーに再インする機会を虎視眈々と窺うくらいにまで復帰した。

あとがき

これが私がうたプリショックで地獄を見た話である。

今でもド素人だが、この頃はさらにド素人だったので、精神的にかなりダメージを受けた。
まとめてみると本当にひどい話なのだが、「生きていればどうにかなる」と言われる通り、まあどうにかなった。
年末にマーベラスで損失を取り返した事もあって、今では笑って話せるネタである。

ブロッコリーはまた買いたいな、と思っているのだが前回の反省を踏まえて慎重に慎重に重ねているうちに結局買えずじまいで今に至る。
そして1800円まで上がった株価は1月の決算で1020円まで落ちた。
本当に恐ろしい株だ…。

どこかでまた再インしたら、その時は「うたプリで大儲けできた話」が書けるといいな、と思ってます。
頼むよ、プリンス様！